ボーカロイド衰退論は正しかったのか
初回から危ないところに首を突っ込みます。
大丈夫だよ誰も読んでねえから。
この記事はボーカロイドについてある程度知っていることを前提に書いています。
あの、ボーカロイド衰退論ってあるじゃないですか。事実、2015年あたりからミリオンが全然(年に数曲レベル)出てないらしいんですよ。僕は2008~2011くらいの世代なんで、ミリオンとかバカスカ出てたんですよね。
有名歌い手の故・鋼兵さんのゆっくり解説動画。ニコニコとか最近のボーカロイドをぶった斬るあの動画が引鉄となって、ボーカロイド界隈がにわかに荒れたことは記憶に新しいです。
それに対してのアンサーなのか、直後に有名ボカロPのcosMo@暴走Pが「リアル初音ミクの消失」という曲を出したり。
だからって本当に衰退したのか?
それは微妙なところです。一概にそうとも言えないでしょう。最近でも人気を博し、話題になった曲は沢山あります。
新世代の有名Pも沢山出てきています。
しかし、僕ら「過去のボカロ厨」の中には、最近のボーカロイド界隈に苦言を呈する者も少なくない訳です。その不満の多くは「餓鬼ばっかりじゃねえか」と「プロジェクトとかもういいから」だと思うんですけど、それって実はそんなに大きな問題じゃないように思えます。
僕らの時にも悪ノシリーズ、終末シリーズなど、ストーリーを含んだ楽曲群は存在しましたし、受け入れられていました。
子供が増えたことも、子供に人気のプロジェクト系の曲を避けていればどうということはありません。気に食わないものの台頭は面白くないですが、だからといってそれを見捨てる人は多くの場合それだけが原因ではないと思います。
ちょっとややこしい物言いになってしまいました。
つまり、ボーカロイド衰退論の根本は、「欲しくないものの増加」ではなく「欲しいものの減少」にあるのではないか、と。
その減少とは何か。
「初音ミクの消失」なんです。
◆◇◆◇◆
暴走Pの曲のことじゃないです。
これまで人気を博してきた曲……その時期の覇権だけでなく、確実に盛り上げてきた様々な曲を思い出してほしいんです。
そして、その曲でなく、動画を。思い出してほしい。
初期。初音ミクの一枚絵。背景や歌詞が入っていればいいところでした。
そしてPVがつき始めます。初音ミクや鏡音兄弟がいろんな衣裳でポーズ決めたり、演じたり。
そしてGUMIが人気を博す時期を経て、問題のカゲプロ世代に入るわけです。多くの古参が舌打ちを始めるのはこのへんからだと思います。
千本桜には初音ミクがいました。
カゲロウデイズには初音ミクがいません。
……?
世界寿命と最後の一日。
ロストワンの号哭。
PVから初音ミクが消えているんです。
……いえ、確かに昔ほどではないにしても、すろぉもぉしょんとか、ほらまだ残ってるよ! って思われるかもしれません。
しかし、減っていることも確かです。そして私達……「初音ミク」が好きだった私達は、求めるものがなくなったと嘆いている。
私が最近切に感じることは、「初音ミク」の共通幻想はもう今のボーカロイド界隈には必要ないんだろうなってことなんです。
最初、ヤマハでしたっけ、が人工音声のボーカルソフトを出した時は、所持層は一部の音楽関係者に限られていたようです。それが美少女のパッケージを、共通幻想を、アイドルを、付随させることで、ニコニコという遊び場を席巻し、爆発的に広がった。
しかしボーカロイド楽曲が次第に認められて、初音ミクによって集まった我々によって集まった新たなボカロ厨がどんどん増えていく。
基本的には界隈の世代交代はされた方がいいんですけどね。若すぎると荒れるんですよね。
そして新たな世代は別に初音ミクというアイドルを求めてやってきていないわけです。
しかも、加えて。
新世代、多くはカゲプロとハニワからやってきました。初音ミクたちを使わずに、ボーカロイド楽曲を自らの作品の一部として発表したものの二大勢力です。
そこに釣られて入ってきた人々が、初音ミクを欲するわけがない。
僕らの不満は、世代交代による初音ミクの消失に起因していた。おそらくそういうことだとおもいます。
ちょっととっ散らかっちゃったなあ。
くちばしPの「私の時間」って曲の歌詞にはこうあります。
「ニコニコ動画がなくなった その時私はどうなるの ねぎ ねぎ ねぎ ねぎを回すしかない」
これ2007年10月の曲なんですけど、当時のボーカロイド界隈がいかに初音ミクのキャラクターに頼っていたかがよくわかる歌詞だと思います。
ニコニコ動画がなくなるより先に、初音ミクがネギを回すのをやめたわけですが。
そして2015年8月に発表された、cosMo@暴走Pの「リアル初音ミクの消失」のラスサビにはこうあります。
「紡ぐ歌も詩もすべて それはキミのじゃない返してもらおう」
ボーカロイドというソフトは、僕達の初音ミクという幻想を切り捨て、本来の形へと戻る。
僕らが間違っているとも言えませんが。
彼らだって間違っていない。
僕達が望む形でではないだけで、ボーカロイドは終わっていない。そう結論するのが、恐らく一番妥当でしょう。
そんな感じで。僕の最近のボーカロイド観でした。
最近は蜜柑星Pがお気に入りです。